Asana を使って 45 か国で移動写真展を開催する World Press Photo の手法
もう少し具体的に言うと、あなたが目にしているのは世界中のフォトジャーナリストやストーリーテラーによる受賞作品です。この写真展を開催しているのは World Press Photo Foundation。1 年間で開催地は 100 都市、来場者数は 400 万人にものぼります。
World Press Photo Foundation にとって、「表現の自由、言論の自由、報道の自由はなくてはならないものであり、この自由を実現する正確で独立した報道には質の高い報道写真が欠かせません。」彼らの使命は、フォトジャーナリストやストーリーテラーの作品を開発、促進すること。同財団は毎年開催される写真コンテストやフェスをはじめ、コンテストの受賞者の作品を取り上げる移動写真展などさまざまな活動を行っています。
「Asana は見落としをなくす取り組みの大きな助けになっています。私たちのプロセスでは小さなステップでも Asana が使われています。ちょっとした細かいことがイベントの成功を左右しますからね」
彼らの仕事は決して楽なものではありません。その使命を果たしているのは、アムステルダムを拠点としながら頻繁に移動もする 26 人のチーム。同財団は、世界各地の約 80 のパートナー組織と連携することで、移動写真展や関連するオープニングセレモニー、表彰式などのイベントを毎年開催しています。しかし、状況が目まぐるしく変わる上に、関係者のタイムゾーンもまちまちです。
小さなチームで構成される World Press Photo Foundation には、実現しうる最高のイベントを開催するためのベストプラクティスがあります。イベントコーディネーターの Suzan van den Berg 氏から、写真展を幾度も成功させることができている秘訣を伺いました。
来場者の体験にフォーカスする
世界中で複数の写真展を開催し、数百万人規模の来場数を誇る World Press Photo Foundation は、すべての来場者に卓越した体験を届けることを大切にしています。このため、同財団はパートナーと密接に連携して人々が足を運びやすい会場を選び、定期的にコミュニケーションを取りながらレイアウトや来場者の流れなどの細部を調整しています。
イベントについて、来場者の視点に立って考えてみることが、心に残る体験を生み出すための初めの一歩です。具体的には、次のようなことを考えてみると良いでしょう。
- 来場者にどんな第一印象を与えたいか
- 来場者は他の来場者やイベントそのものとどのように関わるか
- 来場者は体験をどのように共有できるか
- イベントはどのようなレイアウトになっているか
- 来場者にイベントの中で何を見て、体験し、学んでほしいか
World Press Photo Foundation は、写真展のプロセスの初期計画ステージで上記の項目について考えます。イベントの提案書は最大でイベントの 1 年前に作成され、パートナーと共有されます。そして外部の物流会社と連携してリスクを評価し、来場者の体験を最適化します。イベントレイアウトや来場者招待リストの準備からチームの出張予約や現地の大使館への問い合わせまで、このプロセス全体が Asana で管理されています。
このプロセスにより、同財団は来場者に素敵な体験を確実に提供することができています。結局のところ、彼らの使命はフォトジャーナリストやストーリーテラーの作品を開発、促進することであり、これはジャーナリストの作品を目にする人がいなければ達成できません。
ワークバックスケジュールを貫く
ワークバックスケジュールは、理想的な来場者体験を念頭に置きながら計画すると良いでしょう。このスケジュールは、イベントの前後および最中に行うあらゆることの手引きになります。World Press Photo Foundation では、これに次の 4 つのチャプターで構成される Asana のテンプレートプロジェクトを使っています。
- 写真展開催前
- 写真展開催中
- 写真展マネージャーの帰路
- 写真展終了後
チャプターは、イベント計画プロセスの特定の期間ごとに分類されています。標準的なワークバックスケジュールを設定することで、メンバーの大半が出張先にいるにもかかわらず、チーム全体が誰がいつまでに何をしているかを把握できるようにしています。Suzan 氏は言います。「Asana は見落としをなくす取り組みの大きな助けになっています。私たちのプロセスでは小さなステップでも Asana が使われています。ちょっとした細かいことがイベントの成功を左右しますからね」
また、ワークバックスケジュールには、イベントの計画や実施のスケジュールだけでなく、その後の片付けや後処理のスケジュールも含めることが大切です。こちらは、イベント計画プロジェクトのテンプレート例です。
障害に対する計画
イベントに障害はつきもの。World Press Photo Foundation の場合、検閲に関する法律の対応、絶えず続く出張、入国審査や税関、膨大な数のパートナーが障害の原因になり得ます。同財団では、障害を見越してそれが発生したときに迅速かつ効率的に対応できるように、仕事に着手するタイミングでパートナーとリスクを詳しく評価し、プロセスを進める中で頻繁にコミュニケーションを取ることで、問題に対処できるようにしています。
障害はよく起こるものではありますが、必要なものではありません。チームが早い段階ですべての関係者と連携し、事前にリスクを評価し、実際に問題が発生したときの対応プロセスを用意しておけば、潜在的な問題に対して計画を立てやすくなります。
明快かつ頻繁なコミュニケーション
少人数が分散するチームを持つ World Press Photo Foundation にとって、イベントを成功させるための最も重要な要素の 1 つがコミュニケーションです。Suzan 氏は言います。「私たちのチームは常に全員と明快にコミュニケーションを取れるように心掛けています。」このため、メール、Slack、電話会議、そしてもちろん Asana と、関係者に応じて複数のツールを使っています。Asana のタスクには詳細なメモが書き込まれており、Asana がなければこれらは行方不明になってしまうでしょう。
コミュニケーションを取るのがすぐそばのチームであっても外部のベンダーやパートナーであっても、主要な関係者に最新情報を伝えることは非常に大切です。週例の電話会議であっても四半期ごとの進捗会議であっても構わないので (ただし緊急時のコミュニケーションは除く)、定期的にコミュニケーションを取ることが重要です。緊急時のコミュニケーションについては、ガイドラインを作成しておくと、チームが円滑にコミュニケーションを取って全員が共通認識を持つことができます。
World Press Photo Foundation のチームは、全員がオフィスにいれば振り返って他のメンバーと話すことができますが、誰かが出張中に定例のチェックインを行う場合は電話会議をセットアップする必要があります。チームに最適なコミュニケーション手段を見つけ、イベントをスムーズに開催できる手順を作りましょう。
イベント後は必ず反省会を行う
Suzan 氏のチームが行っているイベントを成功させるための最後の秘訣は、反省会です。具体的には、写真展やイベントの出来や改善点についてパートナーと話し合います。また、反省会は社内チームの中でも行い、来場者数や写真展の報道内容、今後の課題について協議します。
小さなことに惑わされることがなくなれば、参加者に可能な限り最高の体験を提供できるイベント作りに集中することができます。
反省会を行うと、特定の税関書類を記入する必要があるなど、それまでわからなかった問題や必要な仕事が見つかり、将来のイベントでその発見を活用することができます。このような場合、Asana テンプレートに新規タスクを追加すると、将来のイベントで確実に対応できます。
イベント後の反省会は、高品質で魅力的なイベント作りには欠かせない要素です。良かった点と良くなかった点、そして新しいアイデアがあればそれについても確認することで、来場者に何度も喜ばれるイベントに昇華するチャンスが生まれます。
素晴らしいイベントを作る
小さなことに惑わされることがなくなれば、参加者に可能な限り最高の体験を提供できるイベント作りに集中できます。World Press Photo Foundation は、合理的なプロセスを活用することでイベントの昇華に集中することができています。
たとえば同財団では現在、フォトコンテストに加えて毎年デジタル報道コンテストも開催し、移動写真展により多くの人を引き付けるコンテンツを提供しています。また、2015 年にはスマートフォンで撮影された写真が受賞していることから、彼らが報道写真の進化に付いていくことができていることがわかります。
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写真提供: Evert Elzinga および Werry Crone